巨人の気配


Once upon a time—


小さな王国で、

ひとつの異変が

静かに広がっていました。


夜になると、

山の上には

大きな影が揺らぎ、


朝になると、

地面には

巨大な足跡が残されていたのです。


誰ひとり、

巨人を見た者はいません。


けれど人々は、

声をひそめて

こう囁きました。


「きっと、巨人がいる。」


その確信は、

やがて人々の暮らしそのものを

かたちづくっていきました。


人々は恐れ、

身を守るように、

洞窟のような街で

生きるようになったのです。


人が深く信じたものは、

ときに恐れであれ祈りであれ、

世界の輪郭さえ

静かに書き換えてしまうのです。