
一撃で7匹
ある朝、
仕立て屋は
一度の一撃で
七匹のハエを叩き落としました。
それは、
世界から見れば
ほとんど意味を持たない
小さな出来事でした。
けれどその瞬間、
仕立て屋の中に
ひとつの考えが
静かに生まれます。
「ぼくにも
なにかできるかもしれない。」
人の運命は、
ときどき
このような
かすかな確信から
形を取りはじめます。
そこで彼は
ひと切れの布を取り、
そこに言葉を
刺繍しました。
「一撃で七匹。」
言葉は、
事実そのものよりも
遠くまで
歩いていくことがあります。
多くの物語は、
こうした
ささやかな思いつきから
動き出すのです。
そしてその日、
仕立て屋の世界は
少しだけ
色を持ちはじめました。